自由な世界

 

薄ぼんやりとした記憶ではあるが、四天王に限定すると、

まず、俺が一番最初に知ったバーチャルYouTuberは当然ながらキズナアイちゃん。

で、その次に知ったのが電脳少女シロちゃんで、その次はミライアカリちゃんで、

その少し後で輝夜月ちゃんを知り、最後に知ったのがこの人、ねこますサンだった。

 

真面目な話をすると、もしも ねこますサンが四天王に入っていなかった場合、下手をすると俺がこの人の存在を知るのがかなり遅れていた可能性もあったりする。

なぜなら、個人として彼を知ったのではなく、四天王の一人だったから出会えた人なので。

 

だから他の四天王に比べると、俺はこの人の事をちゃんとチェックしていた訳じゃないんだが、VYT界にとって最重要人物の一人なので、今回は俺のわかる限り書かせて頂こうと思う。

 

基本的にはネットで拾った誰かのコメントを頼りにしつつ、そこに俺自身が客観的に見た感想を織り交ぜながら記事を書き進めようかなと思ってる。

 

 

まず知っての通り、四天王と呼ばれる者たちにはそれぞれ大きな功績がある。

 

例えば輝夜月ちゃんの功績だが、まだVYTという存在を知らなかった沢山の人たちを、外の世界から大量に連れてきてブームを作った事だと思うんだ。

 

当時のVYT業界はまだ閉じられた小さな世界で、日本人の殆どがVYTの存在を知らなくて、

だけどルナちゃんが単身外の世界に飛び出してリンクをバシッと貼ってきてくれた。

 

しかし、だ。

それだけだとルナちゃん一人の人気で終わっちゃう可能性もある訳だよ。

外の世界と直接つながってるのはルナちゃんのチャンネルだけだから。

 

それだと一過性のブームで終わっちゃう可能性が高いので、業界全体を知ってもらう必要があるんだよね。

 

VYTブームが起こった理由はこのルナちゃん以外にも色々あるとは思うんだけど、その中の一つとして考えられるのが、ルナちゃん経由のブームと同時進行でニコニコ動画から客を連れてきたシロちゃんかなと思ってる。

 

本来ならYouTubeとは敵対する動画サイトなのだが、今回はニコニコ動画のユーザーが盛り上げてくれたからこそ、VYT全体がブームになっていった事実もあると思うので、シロちゃんも実はブーム作りに一役買っていると思ってる。

本人にはその自覚がないとは思うけど。

 

 

で、上に書いた通り、ルナちゃんは外からの客を増やした功績が大なのだが、客ではなくVYTそのものを増やした人物がいる。

それが四天王の一人でもある「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」...つまり、

ねこますサンだ。

 

ねこますサンは、VYTの歴史を語る上では、恐らくキズナアイちゃんに次いで2番目に重要な役割を果たした人物ではないかと思う。

 

このねこますサン、ご存じの通り、四天王で唯一の個人系VYTであり、そして四天王で唯一の男性VYTであり、さらに四天王で唯一の(RPではない)アバターVYTでもある。

まさに何もかもがキズナアイちゃんとは逆の存在。

 

共通点を探すとしたら、2人とも3Dだって所くらいか。

ねこますサンは企業じゃないから、2Dでも不思議じゃなかったわけだからね。

 

それにしても、個人でありながら企業に混ざって四天王の称号を持っているためか、普通に企業から仕事が入ってくるのに違和感が全くないのが凄いと思う。

 

この人に関しては特に言われているのが「技術を共有し、個人系VYT参入の道筋を作った中心人物の一人」という功績なんだが、俺はそういう技術的な面よりも、VYTに多様性をもたらした事と、そしてもう一つ、後進のために精神的障害を取り払ってくれた事の方が功績としてはでかいのではないかと思っている。

 

いや、技術面にしろ精神的障害にしろ、いずれは後から来た誰かがやったとは思うんだが、重要なのは「ブームに間に合わせた点」なんだよな。

「後から誰かが」では遅かった。

スタート地点にこの人が立っていてくれた事が最高にでかい。

 

時期がバラバラでは駄目だったんだ。

ブームに合わせて、四天王全員が、それぞれの役割を同時進行で行ったからこそ今がある。

だから、四天王という称号はただの飾りなんかじゃないんだ。

 

 

ねこますサンの過去の活動内容に関しては詳しく知らないため、まだ俺が気づいていない事も含めて、この人の功績は多岐に渡ると思われ、その中でもこの ねこますサンがVYTワールドに「多様性」をもたらし、また「精神的障害の緩和」を実現したのは間違いない事実だと思う。

 

要するにこの人は、外に対する功績よりも、内側に対する功績がでかいのだ。

 

 

動画を見ればわかると思うが、ねこますサンは、恐らく常人が考え付くであろう、あらゆる最悪の組み合わせでVYTデビューした。

 

まず見た目は女性...しかも幼女のアバターで、だけど声は男性...しかも若者じゃなくてオジサンという組み合わせ。

それでもまだ普通のしゃべり方なら「男性ゲーマーが女性キャラでプレーしてる感じ」で済んだのだが、ねこますサンはしゃべり方まで普通じゃなかった。

 

にも拘わらず、それでもこの狐の少女は人気者になる事ができた。

 

もしもVYT界にねこますサンがいなかったなら、そして受け入れられていなかったら、果たして今現在、VYTワールドに男性VYTは何人誕生していたのだろう?

そういう i f の話をしても仕方がないのはわかってるんだが、どうしても考えてしまうんだよな。

 

それから特に重要なのが、彼がただの男性ではなく、オジサンだったという事だ。

 

それはなぜかというと、もしねこますサンが若い男性だった場合、残念ながら「オジサンがVYTになる」という発想自体が業界の中に根付いていなかった可能性があり、そうなると、たとえVYTに興味を持った技術持ちのオジサン達がいたとしても、彼らはプロデューサーとして参入するだけで、自分自身がVYTになる事を誰も考えもしなかったと思うんだ。

 

もし自身がやるとしても、その場合は男性のアバターを使うのが普通の考えで、よもや女の子のアバターでデビューしようなどとは露ほども思うまい。

つまり、自分のやりたい事や思い付ける事に制限がかかってしまう。

 

真面目な話、仮にオジサンがVYTになりたいと思っても、現実にはそんなこと、まともな人間には恥ずかしくてできるわけがないんだよ。

ましてや、女の子のアバターでデビューしたいオジサンにとってはハードルがあまりにも高い。

 

だって既存のVYTは演者がみんな若い女の子なんだぞ?

そこに幼女のアバターを被ったオジサンが飛び込む事になるんだぞ?

そんなもん魔王を倒した勇者でも心が折れるわ。

 

一番最初に周りと違う事をすればみんなが一斉に自分を見る。

しかし常人のメンタルではその視線に耐えられない。

だからみんな周りと同じ事をしたがる。

誰だって叩かれたり恥をかくのが怖いんだよ。

 

VYTになるためには、技術的障害だけじゃなく、精神的な障害も乗り越えなくちゃいけない。

ねこますサンはその両方を、個人で考えられる限り最もヘビーな形で実現させた最初の人物。

 

まだブームが来る前に誕生したねこますサンが、最悪レベルの生き恥を一身に背負ってくれたお蔭で、後進の男性VYTにとっての精神的な障害が極限まで下がり、参入する上で彼らが一番苦しむであろう精神的障害を自力でクリアする必要がなくなったんだよな。

 

本当なら沢山の先駆者たちが何年もかけて壊さなきゃいけない部分じゃないか、抵抗感という分厚い壁は。

それを、この人が一人で全部壊してしまった。

ブームが来る前に。

 

「男が男の声のまま女の子のアバターを使っていい」とか「オジサンがオジサンである事を隠さずVYTになってもいい」とか、まともな精神の持ち主なら一番抵抗を感じる部分を、この人が最初に一人で全部やってくれたわけだ。

 

 

そしてもう一つ大事な要素としてあげておきたいのが、演者側だけでなく、見る側の抵抗感もなくなったという点。

 

だってもう誰も叩いてないだろ?

完全に普通の事として受け入れてるだろ?

 

「好い年した男達が、少女のアバターではしゃいでても誰からも変態扱いされない世界」

を、コンビニ勤めの無名のオジサンがたった一人で作ってしまったんだよ。

 

みんな気がついたんだと思う。

人を見た目で判断するのは間違っているという事を。

他人に危害を加えないのであれば、見た目がどうあれ関係ないのだと。

ぱっと見 変質者が闊歩する世界があったって別にいいじゃないかと。

おかしいのは外見だけで、彼らの中身は節度を弁えた普通の人なのだから。

 

 

今までに何度も書いてきた事だけど、みんな先人の功績を甘くみない方がいい。

 

もう一度書くが「オジサンが、幼女の姿を借りて、しかも声は地声で、加えて変なしゃべり方」という最悪の組み合わせで先に恥をかいてくれたから「これより下は無い」と見る側が一気に慣れてしまったんだ。

 

大衆の好奇の視線の中を彼が歩いてくれたからこそ、大衆も彼の存在に慣れてしまい、後から来た後進が周りからジロジロと見られずに歩けるのだ。

 

後進の君たちが気持ち良く歩けるその道は、

どこかの誰かが恥をかきながら作った道だという事を知るべきだ。

 

 

そしてもう一つ、ねこますサンの大きな功績として知られているのが、上の方でも少しふれたが、VYTワールドに「多様性」をもたらした、という事。

VYTの歴史的にもこの部分は非常に重要になると思ってる。

 

もし彼一人がいなければ、今のVYT総人口はかなり少なかったと思うし、そしてもし「演者の性別は男性」「演者の年齢はオジサン」「アバターの性別は女性」「アバターの年齢は幼女」「音声は演者の地声」「普通ではない特殊なしゃべり方」「獣耳」等々...これらの組み合わせの要素が一つでも欠けていたら、要素が一つ欠けていくたびに、やはり今のVYT総人口は大きく下がっていたと思われる。

 

もしこの組み合わせが「アバターは女子高生」「演者は若い男性」の組み合わせだったら、精神的障害は間違いなく今ほど下がっていなかった。

「女子高生でなくて幼女」「若者でなくオジサン」という組み合わせだから良かったんだ。

良かったっていうか、全然良くはないんだけど、その良くなかった事が良かった。

言ってる事わかるか?

 

そしてその風変わりな人物が四天王に入ってしまった事で、本来は無茶苦茶な組み合わせなのに、VYT界ではスタンダードとして固定されてしまったのがでかかった。

 

 

と言うかさ、冷静に考えたら、こういう「女性アバターを使う男性」を笑う人間は「歌舞伎の女形」も笑うべきなんだが、なぜかそういう流れにはなっていないから不思議だよな。

伝統なら何でも許されるのかよ、と言いたいわ。

 

 

ちなみに同じ個人系VYTの、のらきゃっとチャンとの大きな違いとしては、ねこますサンが「オジサンがオジサンのまま、幼女アバター使ってデビューしてもいいんだ」と身を持って示したのに対し、のらチャンの方は「たとえ男性に生まれても、理想の女性に成る事ができる」という事を示した、という違いがあるかな、と思う。

 

言い方を少し変えると、ねこますサンは「隠さなくていい、全部さらけ出してしまえ」と教えてくれたのに対して、のらチャンはこれと逆で「仮想世界で自分自身を全部隠してしまえば、性別も年齢も越えて、自分が成りたいものに成る事ができるんだ」と教えてくれたのかな、と思ってる。

 

この2人は、2人合わせて一つの大きなノルマを達成したのかもしれんな。

 

そして、2人が仲良くしてる姿とか見てると、海外の過激な性差別撤廃運動みたいなことやってるグループとかが目指す「自由な世界」とやらが、実はVYTワールドの中ではとっくに実現してんだよな、と思うわ。

 

いずれにしろ、ねこますサンとのらチャンは「技術の共有」や「個人でも安価でやれる」といった技術面の貢献度が目立つが、男性VYTにとっての精神的障害を早期に取っ払ってくれた事の方が功績としては大きいと思ってる。

だってブームが終わった後にそれをやられても手遅れだったから。

 

 

ちなみに、俺はねこますサンの過去の活動を全く知らないので、俺が知らないだけでもっと様々な功績があるのかもしれないと思って検索したりもしたんだが、でもなぜか検索しても全然ヒットしないんだよな。

過去にどういう活動してた人なんだろうな。

 

 

...あれ?

今気づいたんだけど、俺この人のこと今までずっとロリコンだと思ってたんだけど、よく考えたらこの人自身が幼女の姿になってる訳だから、この人はロリコンじゃなくてロリータなんじゃね?

 

じゃあ、もしねこますサンに「おい! そこのロリコン!」と絡んでくる男がいても、

「こ、この男の人、わらわの事をジロジロ見てくる!

 きっとロリコンに違いないのじゃ~! 怖いのじゃ~!」

とか言って撃退できるんじゃないか?